事実婚をスタートさせるときの注意点

目次

事実婚、意外に気楽でない要注意点

 

夫婦共稼ぎ、下手をすると女性のほうが多く収入を得ているなど、

現代の夫婦関係は 食べさせる・食べさせてもらうの主従関係は影を潜め、お互いが家計にいくらかずつ入れる形式をとるのが普通、

まさにダブルインカム、ワリカンが標準の時代に移り変わりました。

 

そうしますと、籍を入れないで同居していたほうが、万一のときうまくいかなくても離婚にはならないし、ややこしい親戚や親の介護などに 関わらずにすみ、一見気楽に見えます。自分だけの預金もできて安心そうです。

 

しかし実際に生活が始まると、アッと驚く落とし穴が待ち受けている・・

そんなケースもあります。事実婚を選ぶときには、ぜひ事前に確かめてから決断したいものです。

 

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子供が生まれると・・

生まれてくる子供は非嫡子になる?

ふたりだけの甘い生活のときには 何のデメリットもないと思える事実婚ですが お子さんが生まれると、その子は非嫡子として母の戸籍に入り、父親の欄は空欄になります。

 

もし母親が急に交通事故で亡くなったりすると、その子は親権者のない子供ということになってしまい、子供の扶養義務が父親にはないことになります。

 

このことを防ぐためには、父親が子供を認知することが必要です。

 

認知による子供の受けるメリット

1.戸籍の父の欄に父親の名前が載ります。

2.扶養義務が生じ、母親が父親に養育費を請求することができます。

3.父親が死亡したときには、相続権を得ることになります。

 

籍がはいっていないと、恋人同士のような緊張を保ったいい関係がなりたちそうですが、一方で二人の関係が覚めたとき、子供の養育費が払われないということは さらにダメージを受けることになります。

この点はあらかじめ注意してはっきりさせておいたほうがいいのです。

 

養育費について

養育費は認知するかどうかに関わらず、二人の間で話し合って決めるべき性質のものですが、法的には、認知がないと法律上の親子関係がないことになるので、生活費、教育費を請求するには 認知してもらうことが必要です。

 

養育費の相場はどのくらいと考えたらいいのでしょう。

 

本来は その親の生活水準と同レベルが保てるのに必要なお金が

養育費となりますが、「父親がお金がないと言って払ってくれない」という相談があります。しかし、養育費は生活に余裕があれば支払うという性質のものではありません。

 

金額を含め、話し合いで決まらなかった場合、

調停や審判を考えます。養育費の算定につきましては

裁判所のホームページに、記載がありますので

参考にごらんください。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

 

事実婚、住まいを借りる時に 断られることがある?

賃貸契約をする場合、契約者が一人で住んだり、契約者の家族が済む場合は問題ないとする業者でも、契約者とその家族以外が入居するケースには難色を示すことがあります。

 

民間の不動産屋さんを回ると、物件の貸主によりその判断が異なり、事実婚はリスクが高い契約とみる貸主も存在するのです。

 

公営住宅の場合はどうでしょうか。

公営住宅の場合、住民票の続柄は「妻(未届)」「夫(未届)」「同居人」となっていると入居にはおおむね問題ありません。

 

事実婚、住宅購入の際、融資を銀行にしぶられる?

マイホームを購入するとなると、どうでしょうか。

二人がそれぞれ現金のみで購入できるなら、共有名義での購入、登記はできますが、住宅ローンを組むときは、問題が生じてきます。

 

共有名義で住宅購入する際には、銀行は共有名義人が住宅ローンの連帯保証人になることを求めますが、連帯保証人になれるのは2親等以内の家族など銀行所定の親族に限定しています。

 

事実婚の相手はこの条件を満たさないので、住宅ローンを組む場合は、頭金とローンをどちらかが負担することになります。

 

そのため、どうしても共有名義にしたい場合は残りを貯蓄で一括返済できるようになったときに、持ち分の譲渡をして共有名義で登記することになります。専門家にご相談ください。

 

事実婚と介護の意外な盲点

事実婚なら、相手親の介護をしなくてすむのか

なぜ入籍しないのかという問題に関し、ほとんどの場合は

・相手の親の面倒を見たくない

・あるいは、相手の親から結婚を反対されている

・再婚なので 子供もいるし相続でもめたくない

 

パートナーがいて恋人同士の関係であれば

よけいなことは関わりたくない

という本心は理解が容易ですが、実際のところは どうなのでしょうか。

 

民法877条によると親の介護義務(扶養義務)は直系血族及び兄弟姉妹とあります。法律上は入籍してあろうとなかろうと相手の両親の扶養義務はありません。慣習的には 妻は夫の両親を看て当然というところがあるようですが、事実婚となるとそこまでは求められにくいことはあるようです。

 

一方で、事実婚でも夫婦同然に相手の親の介護を担う方もいらっしゃいます。その場合、介護施設に入所の保証人には事実婚だとなることができません。

 

親の介護より自分たちの老後に困る?事実婚

夫婦同じ施設に入居したい

年をとって自宅住まいは厳しいが同じ施設で暮らせればありがたい

と、元気であれば、思います。自宅を出たとたんに会えなくなるのは

意識がはっきりしていればかなり悲しいと思います

 

しかし、入籍されているならば夫婦一緒に受け入れる施設であっても 事実婚であると残念ながら申し込みを断られるのが一般的のようです。

 

施設への入所の前にも、シニア世代の事実婚には まだ心配な点があります。入院・手術の際に求めらる同意書へのサインは 医療機関によっては 事実婚のカップルは認めないとするところが多くあります。

 

シニアでなくとも、交通事故やケガなど不慮の事態は起こり得るので一刻を争うときのために、事実婚の場合には 相手の実親や親戚にふだんから頼んでおくことが必要なのです。

 

反対されているから、煩わしいのはいやだからと

事実婚を選んでも、結局はこのように

円満な関係を結んだほうがよほどいいということになり、

完全にふたりだけで 好きなように生きる

ということは 難しくなります。

 

事実婚、介護保険サービスは利用できるのか?

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介護が始まると、家族だけでは介護を担うのは厳しいので

公的な介護保険サービスの活用を考えます。介護保険サービスを

使えば、1割負担で各種介護サービスを受けられます。

しかし、このサービスの利用には市区町村に要介護認定の申請をする必要があり、事実婚ではできないので、本人または家族、地域包括支援センター、ケアマネージャー、介護施設等に代行してやってもらうことになります。

 

事実婚は経済負担が重くなる?

介護は終了時期が読めず、日本人の寿命は長くなる一途で

家族の負担を重くします。体力的にも精神的にも 大変な負担が

かかりますが、なんといってもお金の負担は重くのしかかります。

 

相続の仕事をしていますと、平均より上のレベルの生活水準のおうちであっても、親がなくなったときにはほとんど預貯金は残らず、

それだけ長年の医療費、介護費がかかっていたこと物語ります。

残金が数万円代で長寿を全うされる方も多くあり、これはご本人が意図して時期を決めたのであろうかと思うときすらあります。

ご家族の長年の介護の負担とご心労が 伺えます。

 

 

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法律上の夫婦であれば、この医療費負担は確定申告で医療費控除として所得税の還付が受けられます。

しかし、事実婚では、配偶者の医療費、介護費用について 夫の医療費控除で負担を軽減することができないので、了解してから決めていきたいものです。

 

会社の介護休業制度は使えるか

パートナーの介護のために勤務先を休むことは

事実婚でも入籍してある結婚であっても差別なく

合計93日まで休業することができます。

 

詳しくは、こちらをご覧ください。

厚生労働省 「育児・介護休業法について」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_08_01.pdf

 

まとめ 事実婚は気楽か不安定か

事実婚はスタート時には なんら不便はないものと

思われます。

事実婚が多い海外のような自由さのほうが勝って

見えます。

 

しかし、日本の法律の上では まだまだ事実婚と法律婚に

線引きがあり、いいとこどりができると考えて決断すると

長い目では余計な苦労を負うことにもなりかねません。

 

税金のこと、介護のことも考え、籍に入って拘束も負担も

担う分、守られる部分があることもわかったうえで、

ふたりはどうするのかをよく話しあい、決めるのが

賢明でしょう。

 

長い目で見たときには、事実婚であろうと

法律上の夫婦であろうと 本人はもとより

親戚、兄弟とも円満なおつきあいがあるほうが

お互いに安心といえるのではないでしょうか。

 

人は最後まで 一人で生ききることが

できません

 

どんなにお金を残しても

自分の足で歩いて

棺に入れる人はいません

 

人は強い

そして傷つきやすく、弱い

生き物です

 

その事実を 今、ひとりひとりが 

若くて元気なときから了解したうえで、みずからの

パートナーとの生き方を決めていきたいものです。

 

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参考文献:今井多恵子,坂和宏展,市川恭子,安井郁子,竹下さくら(2015)日本法令®.

『事実婚・内縁・同性婚 2人のためのお金と法律~法律・税金・社会保険からライフプランまで~』

 

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